Q&A

裁判所から、借家人の「民事再生手続」を開始するとの書面が送達されてきました。賃貸借契約書には、借家人が民事再生手続の申し立てをした場合には契約を解除できるとの特約条項があるので、それに基づいて契約を解除できるでしょうか?

民事再生手続の申し立てがなされただけでは、契約解除はできません。

「民事再生手続の開始」が決定すると、借家人は賃貸契約の「解除」か「継続」を選択できる

まず、民事再生手続とは、経済的に窮地にある債務者(借家人)みずからが再生計画を立て、それに対して、債権者の過半数の同意が得られたことを条件として、裁判所が再生計画として認定し、それによって、債務者の経済生活の再生を図ることを目的とするものです。債務者が民事再生手続の申し立てをすると、裁判所は再生手続を開始する旨の決定を行ないます。この決定がなされると、借家人は賃貸借契約を解除するか、そのまま継続するかどちらかを選択をすることができます。それでは、借家人が契約の継続を選択した場合、家主は家賃の支払いを確保することができるのでしょうか。再生手続開始の決定がなされる前の滞納家賃を再生債権といいます。滞納家賃の支払いは、借家人が作成した再生計画に債権者が同意し、裁判所の認可決定がおりるまではストップされます。再生計画が実行されると支払いが開始されますが、通常、7割くらいはカットされ、3割くらいの家賃が3年ほどの長期分割によって支払われることとなります。

「民事再生」を申し立てた時点で家賃滞納があれば賃貸契約を解除できる

一方、再生開始決定がなされた後の家賃は共益債権といわれ、再生手続とは関係なく、随時、再生債権に先立って弁済を受けることができます。それでは、賃貸借契約で「借家人が民事再生手続の申し立てをした場合には契約を解除することができる」との条項を設けていた場合、家主は上記の民事再生手続を排除して、賃貸借契約を解除することはできないのでしょうか。この点、このような特約を有効とすると、再生しようとする債務者の経済的再生を妨げ、また、借地借家法の賃借人保護の理念にも反するため、特約は無効であると解されています。ただし、借家人が民事再生を申し立てた時点で既に家賃を滞納しているわけですから、通常の債務不履行によって契約解除を選択することもできます。
(Owners誌2007年10月号より)