Q&A

家賃を何ヵ月も滞納している借家人に対して契約解除の通知を出したいのですが、郵便物を一切受け取ってくれません。何か良い方法はないでしょうか?

郵便物の受領を拒否されても、郵便局の留置機関の満了をもって解除の効力は発生します。

意思表示は相手に到達しなければ効力は生じないが…

原則として、意思表示は相手方に到達しなければ効力は生じません(民法97条1項)。したがって、契約解除の意思表示も借家人に到達しなければ契約解除の効力は認められないことになります。
一般的に契約解除の意思表示は、配達証明つきの内容証明郵便により行なわれます。しかし、借家人が内容証明郵便を受け取らない場合、不在配達通知書が借家人宛に差し出され、所定の期間、郵便局に留め置きとなります。そして留置期間が経過すると差出人である家主に返還されます。
この場合、借家人は郵便物の内容を呼んでいないので、解除の意思表示がされていることを知りません。しかし、借家人が郵便物を受け取らない限り解除の意思表示が到達しないと解すべきとすると、いつまでたっても家主は契約解除ができなくなります。
したがって、民法97条の「意思表示の到達」とは、相手方が意思表示を了知することが可能な状態に置かれていれば、実際に了知する必要はないと解されています(最高裁昭和36年4月20日判決)。

郵便物の留置期間の満了をもって契約解除の意思表示が到達したと見なされる

ご質問の場合でも、「内容証明郵便が相手方の不在により受領されない場合、郵便配達員は不在配達通知書を名宛人方に差し置き、その受領を可能にしているものであるから、動内容証明郵便は特段の事情が無い限り、留置期間の満了により名宛人に到達したと解するのが相当」(東京地裁平成5年5月21日判決)と解され、留置期間満了をもって契約解除の意思表示は借家人に到達したと解されます。
なお、訴訟を提起して借家の明け渡しを求める場合、従来は訴えを提起する前に契約解除の通知を出しておく必要がありました。しかし、近年の民事訴訟法の改正により、わざわざ通知を出す必要がなくなり、訴状に契約を解除する旨の意思表示を記載し、訴状を公示送達によって送達するだけでよいことになりました。(民事訴訟法113条)。
(Owners誌2006年3月号より)