Q&A

借家契約を2年ごとに更新する際、家賃を1割増額するとの特約があるにもかかわらず、借家人は従来の家賃しか支払ってきません。特約の有効性について、どのように解釈すればよいのでしょうか?

特別の場合を覗いて、家賃の自動改定特約は有効と考えられます。

時代とともに解釈が変化してきた

特約の有効性について、まず一般論として、家賃の自動改訂特約が有効かどうかが問題となります。なぜなら、借地借家法32条は、以下のような場合に家賃を増額することができると規定しているからです。
・租税などの負担の増加
・土地や建物の価格の上昇その他の経済事情の変動
・近隣の同種の建物の借費に比べて不相当となったとき
つまり、上記のような事情変更の有無に関係なく、家賃を自動的に改定する特約は借地借家法32条に反するのではないかとの疑問が生じます。これまでは、ご質問のような特約は無効であると解していた判例もありました。(大阪地判昭和50年8月13日)。しかし現在では、自動改定特約であるという理由だけで特約自体を無効と解するものなくなり、個々の事例ごとに判断して、借家人に著しく不利益であるなど、特段の事情がある場合に限って特約が無効になると解しています(東京地判 平成元年9月5日、東京地判 平成5年8月30日等)

借家人にとって「著しい不利益」でない限り「家賃自動改定の特約」は認められる

たとえば、土地の賃料を毎年の固定資産税額の3倍とする賃料改定特約について、具体的な事情の総合考慮して有効であると判示したもの(東京地判平成6年11月28日)。また賃料は3年ごとに経済情勢の変動を考慮して取り決めるが、一定割合は必ず増加するという合意は有効としたものが(東京地判平成7年1月24日)などがあります。

ご質問のケースのように、2年後との更新時に1割程度の家賃増額をするという特約は借家人に著しく不利益だとはいえないと思われますので、有効と解してよいと考えます。

ただし、公租公課や物価の上昇率、近隣の同種の家賃の相場と比較して1割の家賃の増額が借家人にとって著しく不利益と介される場合には、借家人からの家賃減額請求が認められる可能性が高いでしょう。
(Owners誌2005年11月号より)