Q&A

裁判所から敷金の差押命令と陳述命令が送られてきました。
どのように対応したらよいでしょうか?

陳述命令に支払う意思はないと記載して、期限内に裁判所に提出してください。

債権者が差し押さえできるのは、借家明け渡し後に明らかになる「敷金の残金」

敷金とは、家主が借家人から預かる預り金のことであり、借家人の財産です。したがって、借家人の債権者は借家人の財産である敷金を差し押えることができます。借家人の債権者が裁判所に対して差押命令の申し立てをし、それによって裁判所が敷金の差し押さえを認めて命令を下すと、家主に債権差押命令と陳述命令が送達されてきます。その場合、家主は直ちに債権者に対して、敷金を支払う必要があるのでしょうか。答えはノーです。そもそも、敷金とは、将来家主が借家人から建物を明け渡してもらったときに、借家人に家賃の滞納等の債務不履行があれば、それらの費用を敷金から控除することを目的として預かるものですから、家主としては、その残金を借家人に返還すれば足りるものです。したがって、債権者が差し押さえたのは、実際にはその残金に関する敷金返還請求権ということになります。しかし、残金は将来建物の明け渡しが行なわれた時点で具体化するものであり現時点では返還額は不明ですから、家主は直ちに、敷金を債権者に支払う必要はないわけです。連帯保証人に請求する場合は前もって借家人にその旨を通知することが大切。

「陳述命令」は家主が債権者に敷金を支払う意思があるか否かを答えるためのもの

また、敷金を差し押えられたからといって、債権者に対して直ちに敷金を支払うことは絶対にやってはいけないことです。支払わなくてもよいのを支払うことにより、借家人に対する担保(敷金)がなくなってしまい、将来、借家人が家賃の滞納をしても、それを敷金から控除することができなくなってしまいます。
ところで、敷金が差し押さえられると、裁判所から差押命令とともに陳述命令というものが送達されてきます。これは、家主に対して債権者に支払う意思があるのかどうかを陳述するように命令するものであり、所定の期間内に所定の事項を記載して、判所に提出する必要があります。その際、「敷金返還債務はありますが、弁済期が未だ到来していないので、弁済する意思はありません。」と記載をして裁判所に提出してください。
(Owners誌2007年7月号より)