Q&A

裁判所から、借家人が差し入れていた敷金を差し押さえるとの通知が届きました。借家人は、家賃を滞納しています。どのように対応したらよいでしょうか?

借家契約が終了して借家を明け渡してもらうまでは、敷金を支払う必要はありません。また、建物を明け渡してもらうまでに発生した滞納家賃は、敷金から控除することができます。

借家の明け渡しが済んでいなければ「敷金返還請求権」は発生しない

判例・通説によれば、「敷金返還請求権」は借家契約の終了時点で発生するものではなく、借家を明け渡してもらった時点で発生すると解されています。したがって、借家が明け渡されていない以上、「敷金返還請求権」は発生していませんので、たとえ裁判所から「敷金返還請求権」を差し押えるとの通知が送られてきても、差押債権者に対して、(領かっている)敷金を支払う必要は一切ありません。

差押債権者への支払いは敷金から滞納家賃等を控除した残額

それでは、借家人から借家を明け渡してもらった後、差押債権者に対して、いかなる範囲の敷金を支払えばよいのでしょうか。敷金とは、借家契約上の借家人の債務を担保するために、借家人から家主に対して交付される金銭であり、借家人が家賃を滞納した場合など、借家人の債務があれば、それを控除して返還されるものであると解されています。したがって、敷金から控除できる借家人の債務は、借家の明け渡しまでに発生した一切の債務ということになります。つまり差押債権者への支払いは、滞納家賃等を敷金から控除した残額ということになります。
(Owners誌2004年11月号より)