Q&A

賃借人の1人が窓ガラスを破られるという被害を受け、窓ガラスの修繕をしない限り、賃料を支払わないと言ってきました。賃借人の言い分を認めなくてはならないのでしょうか?

建物が通常に使用できなくなった場合、その程度に応じて賃借人は賃料の減額請求をすることは可能ですが、家賃の支払を拒否することはできません。

賃借人の過失に寄らずに支障が起きた場合、支障の程度に応じて家賃の減額請求ができる

家主は、借家人に対して建物を修繕する義務があります(民法606条1項)。したがって、借家人が自らの過失で窓ガラスを破ったという事情がない限り、家主は窓ガラスを修繕する義務があります。
それでは、修繕が行われるまでの間、借家人は家賃の全部又は一部の支払いを拒否できるでしょうか。民法611条1項によれば、借家の一部が借家人の過失によらずに滅失した場合は、借家人はその割合に応じて家賃の減額を請求できると規定されています。また、家主が修繕を行わないことで、借家の使用に著しい支障が生じている場合には、家賃の減額請求が認められると解されています。

家賃の減額請求の権利は認められているが、支払いを拒否することはできない

以上を前提に、ご質問のケースを検討してみましょう。
まず、たとえばアパートが一間だけで、真冬のため、窓ガラスの応急手当だけではとても居住できないような場合には、借家の使用に著しい支障を生じているといえますので、借家人は家主に対して家賃の減額請求ができます。
しかし、それはあくまでも、家賃の減額請求の権利が認められているだけであって、借家人が独断で決めた減額家賃を支払う権利を認めたものではありません。まして、家賃の支払い拒否まで認められているわけではありません。
また、破られた窓ガラスがトイレのものであったり、複数ある部屋の一部であるなど、部屋の一部に支障が生じているだけで借家の使用が可能な場合には、家賃の減額請求は認められないというのが判例の大勢といえます(最高裁 昭和38年11月28日)。
しかし、その場合であっても借家人は、修繕義務違反に基づいて家主に損害賠償を請求することができ、それが認められた場合には、家賃から損害金額を差し引いて支払うことが可能となります。
(Owners誌2006年2月号より)