Q&A

アパートの窓枠の手すりが外れて、入居者が地面に落下して大怪我をしました。このような場合、家主は損害賠償責任を負うのでしょうか?

家主は、土地工作物責任を問われる可能性があります。

転落の危険性が認められる場合に「瑕疵(かし)」があったと判断される

民法717条1項は、「土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があるによりて他人に損害を生じたるときは…損害賠償の責任に任ず」と規程しています。ここで言う「土地の工作物」とは、土地に密着して人工的に作り出された設備のことを言い、アパートおよびアパートと一体をなしている窓枠の手すりなどは、「土地の工作物」と言えます。
そして、「瑕疵」とは、そのものが通常備えるべき安全な性状を欠いていることを言います。たとえば、子供が階段で遊んでいて、階段を踏み外して転落したような場合、ただそれだけのことで、階段に「瑕疵」があったと判断することはできません。つまり階段の幅が著しく狭く、しかも急勾配であり、滑りやすい素材を使用しているなど、転落の危険性が十分に認められるような場合でなければ、階段が通常備えるべき安全な性状を欠いているとは言えず、「瑕疵」は認められません。

家主は万一の事故を防ぐため手すりの安全性に注意を払う必要がある

それでは、ご質問のケースでは、「瑕疵」があると言えるでしょうか。窓枠の手すりは、その性質上、借家人がよりかかることが十分予想されるものであり、もし手すりが外れれば、転落して大怪我をすることも十分考えられます。
したがって、家主としては手すりが外れないかどうか、日ごろから注意を払う必要があり、それを怠って大事故になった場合には、手すりに「瑕疵」があったものとして、損害賠償責任を負うことになります。ただし、手すりがゆるんでいることを借家人が知っていて転落した場合は、借家人の過失が認められるので、家主の損害賠償額の減額が認められます。
また、大型の台風が来て、それが原因で手すりがゆるんでいたところ、それに気づかずに手すりによりかかったために手すりが外れて落下した場合には、「不可抗力」によるものとして、家主は責任を負うことはありません。
(Owners誌2005年10月号より)