Q&A

賃借人の一人がマンションの敷地に自動車を勝手に駐車したり、屋上に洗濯物を干して困っています。このようなことは許されるのでしょうか?

賃借人には一定の範囲内で、敷地および付帯施設の利用権が認められています。

敷地や施設は、無制限に利用できるわけではない

建物の賃貸借契約は建物の使用を目的とするものですが、賃借人は建物の使用に必要な範囲内において、その敷地や施設を利用する権利が認められています(最高裁昭和38年2月21日判決等)。
しかし、建物の敷地や施設の利用権が認められているとしても、無制限に許されるものではなく、建物使用に必要な範囲に限られています。
建物使用に必要な範囲は、使用目的、建物の構造・外観、付帯施設の位置、付帯設備の構造、賃借人の人数・占有場所の状況などの諸事情を勘案して、賃借人にとってそれが必要な範囲内といえるかどうかによって判断されます。
たとえば、居住建物に隣接しているベランダを専用で使用することは、建物の構造上などから認められています。しかし、隣室との境界近くに物置を設置することは、緊急時における非難の必要性の観点から、「建物の使用目的」の範囲を超えているため、許されないと考えられます。

屋上に洗濯物を干すと、物件の美観を損なう

それでは、マンションの敷地に自動車を勝手に駐車させることは、「使用目的の範囲」といえるでしょうか。この場合、たとえば賃借人の人数に比してマンションの敷地が狭く、他の賃借人も自動車の駐車を希望しているようなケースでは、特定の賃借人だけにそれが許されるのは不公平であるため、「使用目的の範囲」を超えているといえます。
しかし、1階店舗の賃借人は道路に面する当該ビルの敷地を使用できるとした判例もあり、駐車が認められるか田舎はケースバイケースであと考えられます。
次に、マンションの屋上を物干し場として使用することについてですが、これはマンションの美観が損なわれるなどマンションの価値の下落につながります。しかも、屋上が居住部分から離れた場所にあることなどを総合的に考慮すると、建物の「使用目的の範囲」を超えたものといえるため、その使用は許されないと解されます。
(Owners誌2005年9月号より)