Q&A

借家人から、借家の内装に使われた新建材が原因で、病気になったと言ってきました。どのように対処したらよいでしょうか?

標準的な新建材を使用している以上、責任を問われるケースは極めて少ないと思われます。

シックハウス症候群を完全に防ぐことは不可能

近年、建物の内装材に新建材が使われることから、新建材から発散するホルムアルデヒドなどの臭気などのために、人体に化学物質過敏症、視覚機能障害、喘息、アトピーなどの症状が引き起こされる事態が多発し、社会問題となっています(いわゆるシックハウス症候群)。そのため、平成15年に建築基準法が改正され、ホルムアルデヒドを発散する新建材の使用を制限する等の規制がなされました。
しかし、規制が守られていても有害物質の発散を全面的に阻止することは不可能であり、借家人がシックハウス症候群にかかることも十分考えられます。その場合、家主は借家人に損害賠償をしなければならないのでしょうか?家主は、借家人に対して借家を使用収益させる義務があり、当然借家人の健康を阻害しない居住環境を提供する義務も含まれています。したがって、新建材が有害物質を発散し、居住に適する状態とはいえない場合には、家主は義務に違反していることになり、債務不履行となります。

トラブル防止のために、換気設備は十分に

しかし、実際には新建材から有害物質が発散しているというだけでは、家主が借家人に対して損害賠償責任を負うことはありません。
つまり借家を建築するにあたり、家主や施工業者に対して、新建材を一切使わないことを要求することは現実的ではなく、著しく不可能なことです。しかもシックハウス症候群の発症の可能性を予見することも著しく困難であり、標準的な新建材を使用している以上は、たとえ有害物質が発散したとしても、一般的には家主に対して故意・過失を認めることはできないからです。同様の判例も多数出ています(横浜地裁平成10年2月25日判決)。
しかし、家主としてはこうしたトラブルを未然に防止するためにも、賃貸する前に換気設備を十分にし、場合によっては、化学物質を発散させる「ベークアウト」を施すなどの措置を講じておく必要があるでしょう。
(Owners誌2005年8月号より)