Q&A

借主のなかに一人暮らしの高齢者がいます。最近、痴呆が進んでいるのか、少し奇妙な行動も目立ち、他の借主から苦情も出ています。今後、どう対応すればよいでしょうか?

親族に引き取ってもらうようにしましょう。それができない場合には、成年後後見人の選任をしてもらうとよいでしょう。

身寄りに連絡し、引き取ってもらう

高齢者が借家を毀損するとか、他の借家人に迷惑をかけている場合には、使用目的違反があったとして、賃貸借契約を解除して借家を明渡してもらうことができます。ただし、判例によれば借家人に使用目的違反の行為があっても、その程度が家主との信頼関係を破壊するものでなければ、借家を明渡してもらうことはできないと解されていますので、この点は注意を要します。
ご質問のケースのように入居者の痴呆が進んでいるなら、今後、ますます迷惑行為は度を増していくことも考えられます。そこで、まずその入居者に子供や孫などの身寄りがあるかどうかを調査する必要があります。もし、身寄りがあれば、老人を引き取ってもらうか、老人ホームを探してもらい、入居の手続きをとるように頼むのも一つの方法です。
民法では3親等内の親族には扶養義務があることを説明して理解を求めてみてください。

親族の理解が得られない場合は、「成年後見人」を裁判所に選任してもらう

それでも、どうしても親族の理解が得られない場合には、せめて成年後見人の申し立てをしてほしいと頼んでみるのがよいでしょう。
成年後見人の制度とは、痴呆などの精神上の障害によって判断能力を欠いている場合、その者の身上看護等を行なう者を裁判所に選任してもらう制度です。成年後見人が選任されれば、入居者の痴呆行為によって迷惑を被っていることを成年後見人に説明をして、老人ホームに入居する手続きをとってもらうことが可能となります。
しかし、老人に全く身寄りがない場合には、この制度を利用することもできません。成年後見人の申立てが行なえるのは、4親等以内の親族のみと規定されているからです。その場合には市や区の福祉課、民生委員に相談して、対応を検討する以外にはないでしょう。
(Owners誌2005年4月号より)