Q&A

賃貸アパートで自殺者が出ました。連帯保証人に損害賠償を請求したいのですが、可能でしょうか?また入居希望者に対し、自殺者が出たことを説明する必要はあるのでしようか?

一定の範囲内で損害賠償請求をすることができると考えます。また、入居希望者に対しては、自殺者の出たアパートであることを説明する必要があります。

相当の被害を被るため、損害賠償の請求ができる

自殺者の出た賃貸アパートであることを知って借りる人は、少ないでしょう。
その結果、長期にわたり借り手がつかなかったり、相場よりも安い家賃で賃貸するなど、本来ならば入るべき家賃収入が入らないことが当然予想され、大家さんは相当の損害を被ると考えられます。
判例が見当たりませんが、自殺と損害(家賃収入)との因果関係も認められますので、連帯保証人に対して損害賠償を請求することができると考えられます。しかし、入居者が現れない限り永久にというのでは、あまりに連帯保証人に酷となりますので、常識的な範囲内に限定されるといえます。

入居決定に重要な影響を及ぼす事項は説明しなくてはならない

ところで、賃貸を仲介する不動産会社は、入居希望者に対して自殺者が出たことを説明する義務があるでしょうか。
宅地建物取引業法は、宅地建物取引業者に対して重要事項の説明義務を科していますが、自殺者が出たことを説明しなければならないとは規定していません。
しかし、重要事項として列挙されていなくても、アパートを借りるかどうかの意思決定に重要な影響をおよぼす事項は、賃貸借契約に付随する義務として、入居希望者に説明する義務があります。
自殺者の出たアパートであることは、通常、入居を決める上で、極めて重要な事項だと考えられますので、入居希望者に説明しなければならないといえます。
ところで、自殺者が出たことを説明しなかった場合、入居後に入居者が知って退去に至ることも考えられます。その際、入居者は、説明義務違反および債務不履行に基づいて、損害賠償請求、契約解除をすることができます。損害の中には、当然、敷金、礼金、引っ越し費用が含まれます。説明を受けていれば、入居者は、支払う必要のない費用だったのですから。
では、いつまで自殺者が出たことを説明すべきかという問題ですが、永久にというわけではありません。次第に忘れ去られるものですから、常識的に判断するほかないと思われます。
(Owners誌2003年9月号より)