Q&A

借家人がアパートの一室で学習塾を開こうとしていることが分かりました。何か問題が起きないでしょうか。また、止めさせることはできるのでしょうか。

大勢の子供が出入りすることにより借家を毀損する可能性もあり、場合によっては契約を解除することができます。

学習塾を許せば、「建物への負荷」「近隣迷惑」の問題も

借家人は、借家を使用する権利を持っています。しかし、どのように使用してもよいわけではなく、契約で定められた使用目的・方法による必要があります。
賃貸借契約書で、使用目的を「住居」と定めている場合には、借家を店舗として使用することはできません。また、使用目的を定めていない場合でも、建物本来の性質に応じた用法に基づいて使用しなければなりません。
それでは、使用目的が「住居」と限定されている場合に、借家の一室を学習塾に使用することが許されるでしょうか?
この点、学習塾としての使用を許せば、借家に大勢の子供が出入りすることになるため借家に負荷がかかり、構造上の問題が生じます。また、借家全体が騒がしくなり、他の借家人や近隣の住民への迷惑も十分予想されます。その結果、他の借家人が退去し、空室が出ることも考えられます。

借家人に、注意事項を書面で約束してもらう

したがって、住居として賃借している借家を学習塾として使用することは使用目的違反になると考えられます。しかし、違反したことが直ちに契約解除事由になるわけではありません。賃貸借契約においては、家主と借家人の信頼関係が破壊されたと考えられる程度の用法違反がない限り、契約解除はできないと解されています。
では、学習塾として使用する場合はどうでしょうか。下級審の判例ですが、生徒数が少数で、絨毯を敷いて畳を毀損しないように配慮するなど、建物に格別の毀損が認められない場合には用法違反を理由に契約解除はできないと判示したものがあります(東京高等裁判所 昭和50年7月24日判決)。
そこで、家主としては、近隣に迷惑をかけないよう生徒たちに日頃から注意すること、借家を傷つけないような配慮をすること、生徒の人数を制限することなどについて、借家人から約束の書面を取っておくとよいと思います。
万一、違反行為が見つかった場合は内容証明郵便を出して是正を求め、それでも是正しなければ、家主と借家人との間の信頼関係が破壊されたものとして借家契約を解除すればよいでしょう。