Q&A

常に1カ月分の家賃を滞納している借家人がいます。2カ月分滞納したことはないのですが、毎月催促しても状況は変わりません。このような場合でも契約を解除することはできるでしょうか?

滞納している家賃が1カ月分であっても、滞納が長期間にわたっている場合には契約を解除することができます。

一般的には、「3カ月程度の家賃滞納」であれば契約の解除が認められる

まず、家賃を1カ月分でも滞納すれば、借家人は債務不履行となります。そして、民法541条によれば、債務不履行があれば契約を解除することができると規定されています。
ところが判例は、賃貸借契約においては、このような法理を形式的に適用するのは妥当ではないと考えています。
その理由は、賃貸借契約は長期間にわたって継続する予定であること、また借家は借家人の生活の基盤となっているという事情から、契約解除は「家主と借家人の信頼関係が破壊されたと解釈できる程度の滞納」がない限り認められないというのが、確定した判例理論となっています。
そして、判例は、家主と借家人との信頼関係が破壊されたと「認められる程度」については、1カ月分の家賃を滞納しただけでは認められず、3カ月分程度の家賃を滞納していることが必要と一般に解しています。
それは、3カ月分程度の家賃滞納があれば、家主と借家人の信頼関係が破壊されたと解しても、借家人の保護に欠けることはないとの判断に基づいています。

「家賃滞納1カ月」状態が続いている場合は、家主と借家人の信頼関係が破壊されたといえる

それでは、ご質問のケースのように滞納状態が長期にわたっている場合でも、滞納家賃が1カ月分に過ぎなければ契約解除は許されないのでしょうか。
この点、判例が3カ月分程度の滞納が必要と解している理由は、先述のように家主と借家人の信頼関係が破壊されたと解するには、1カ月分の家賃滞納では不十分との判断に基づいています。
しかし、ご質問のように1カ月分の家賃滞納でも、それが長期にわたっており、家主の再三の催告にも関わらず借家人がその状態を解消しようとせず、恒常的に1カ月分の家賃滞納が継続している場合には、もはや家主と借家人との信頼関係は破壊されたとして、契約解除をしても借家人の保護に欠けることはないでしょう。
(Owners誌2009年6月号より)