Q&A

借地人が地主である私に何の相談もなく、借地上の建物を賃貸してしまいました。このような場合、借地契約を解除できるでしょうか。契約書には、借地上の建物を賃貸する場合には、地主の承諾が必要であると記載しています。

借地上の建物を賃貸することは、借地権の無断転貸には該当しませんので、借地の賃貸借契約を解除することはできません。

借地人が、建物を第三者に賃貸することは自由

 民法 612条1項では、借地人は地主の承諾なく、借地権を譲渡・転貸することができないとされています。これは、賃貸借契約が、賃貸人と賃借人の信頼関係に基づいて行なわれるものであることから、賃貸人が信頼関係ありと認めた賃借人以外の者によって、勝手に賃貸物件を利用されることを禁止したものです。それでは、借地上の建物を賃貸することは、民法612条1項にいう「無断転貸」に該当するのでしょうか。
この点については、大審院の判例(大判昭和8年12月11日)以来、「無断転貸」には該当しないと解されており、学説上もほとんど異論がないといわれています。それは賃貸人が賃借人に対して、借地の上に建物を建築所有して土地を利用することを認めている以上、賃借人がその建物に居住しようが、第三者に賃貸して利用させようが、土地の使用方法としては何の問題もなく、両者の信頼関係を損なうものではないとの判断によります。
ただし、借地権と借地上の建物を第三者に売却することは、賃貸人が予想する利用範囲を超えており、賃借権の「無断譲渡」に該当するので、賃貸人は、建物の収去と土地の明け渡しを求めて訴訟を起こすことになります。

賃借人は、特約の変更を裁判所に求めることができる

一方、「賃借人が第三者に建物を賃貸する場合には、賃貸人の承諾が必要」との特約を定めることも有効と解されており、特約がある場合には、賃借人は賃貸人の承諾を得る必要があります。しかし、賃貸人が承諾を拒否した場合、賃借人は借地借家法17条1項により、賃貸人の承諾なく借地上の建物を賃貸できるように、裁判所に借地条件の変更許可を求めることができます。
裁判所では、賃借人の訴えに対し、賃貸人の不利益にならないという判断のもとで検討されますが、建物を賃貸するだけで、不利益になるとは考えがたいので、通常は賃借人の申し入れにそって借地条件の変更が認められます。ただし、第三者である賃借人が暴力団組員などの場合、裁判所は変更を認めないと考えられます。
なお仮に、賃借人が借地条件変更の裁判を経ずに、建物を第三者に賃貸した場合でも、特段の事情がない限り、賃貸人と賃借人の信頼関係は破壊されていないものとして、賃貸借契約の解除は許されないと考えられます。
(Owners誌2010年5月号より)