Q&A

家賃を滞納している借家人に対し、賃貸借契約を解除した上で建物明け渡しの裁判を起こし、明け渡しの判決が出たにもかかわらず、建物を明け渡してくれません。管理会社に依頼して張り紙をしたり、ドアをロックするなどして明け渡してもらおうと思いますが、問題はないでしょうか?

不法行為に該当し、損害賠償請求される可能性があります。きちんと強制執行の手続きを取る必要があります。

賃貸人側が自力で、借家人を閉め出すことは違法

最近、家賃を滞納している借家人に対して、張り紙をしたりドアをロックするなど、法的手続きを取ることなく借家人を借家の中に入ることができないようにして、借家を明け渡させる「追い出し屋」といわれる業者の行為が、社会問題となりました。
 このような追い出し行為は法的に許されたものではなく、民法709条の不法行為に該当します。法は、賃貸人側が自力で、自己の権利の名のもとに借家人を無視した行為は許していないのです。
 法律上、借家の明け渡しの手続きとして、「建物明渡の強制執行」という手段が認められている以上、法的手続きを取らずに、賃貸人側が自力で、借家人を借家から閉め出すことは違法であり、不法行為(民法709条)に該当するのです(姫路簡易裁判所平成21年12月22日判決)

判決が出ていても、賃貸人側の強制的行為は許されない

 ご質問のケースでは、すでに「建物明渡」の判決まで取っているということですから借家人は法的に借家を明け渡す義務があります。そのため、賃貸人側の強制的な行為は、法的にも許されるとも思われがちです。しかし、「建物明渡」の判決を取っていても、きちんと「建物明渡の強制執行手続き」を踏まない限り、不法行為に該当することになります。
 「建物明渡」の判決を取っていれば、あとは強制執行の手続きを取るだけで済みますので、手間もそれほどかかりません。強制執行の申し立てを行なえば、執行官という人が借家の明け渡しを実行してくれます。
 なお、借家人には滞納している家賃を支払う義務がありますが、不法行為に基づく損害賠償請求権を認める判決が出てしまうと、借家人が家賃を支払っていないことを理由に、損害賠償金の支払いを拒むことはできません。
そして、滞納している家賃は支払ってもらえない上、損害賠償金を支払わなければならなくなりますので、注意が必要です。
(Owners誌2010年7月号より)