Q&A

借家人のいるマンションを購入したのですが、賃貸借契約を改めて結び直す必要があるでしょうか。その際、契約条件を変更することはできるのでしょうか。

賃貸借契約を改めて結び直す必要はありません。また、借家人の合意が得られない限り、契約条件の変更はできません。

賃貸借契約条件は、そのまま新所有者に引き継がれる

借家人のいるマンションを購入した場合、原則として、賃貸人の地位はそのまま新所有者に引き継がれると解されています(最高裁昭和39年8月28日判決)。
新所有者が賃貸人の地位を得るためには、購入した借家の所有権移転登記を行なう必要があります(最高裁昭和49年3月19日判決)が、借家人に対して、以前の所有者から地位を引き継ぐことについての同意を得る必要はありません(最高裁昭和46年4月23日判決)。
それでは、新所有者は借家を購入したことにより、借家人との間で改めて、賃貸借契約を結び直す必要があるのでしょうか。
この点、判例(最高裁昭和46年2月19日判決)は、「賃貸人の地位の移転に伴って、新所有者に引き継がれる賃貸借契約の内容は、旧所有者との間で締結された賃貸借契約の内容と同一であり、契約条件もそのまま引き継がれる」と解しています。

借家人の合意が得られれば、契約条件の変更は可能

したがって、借家を購入した新所有者は、改めて借家人との間で賃貸借契約を結び直す必要はないということになりますが、実際には結び直しが行なわれることがよくあります。しかし、先述のように、そのこと自体には法的な意味はないため、賃貸人が変更したことを確認するものに過ぎないと解されます。
もっとも、新所有者として、従前の賃貸借契約の内容に不満がある場合には、賃貸人が新しく変わったことをいい機会であるとして、借家人に対して家賃の増額その他の契約条件の変更を申し入れるということもよく行なわれているようです。
その場合、新所有者と借家人との間で協議が整えば、合意された内容で賃貸借契約を結び直せばよいことです。しかし、協議が整わない場合は、賃貸借契約は従前の契約条件がそのまま継続するものですから、借家人は新所有者の契約条件の変更に応じる必要はなく、応じないからといって、借家から退去しなければならないという理由になりません。
(Owners誌2010年9月号より)