Q&A

2階建ての建物の1階を店舗、2階を住宅用に賃貸していたところ、借家人が店を閉めることになったので、1階部分だけ解約したいと言ってきました。1階部分だけの解約を認めなければならないのでしょうか?

1階部分と2階部分が独立した形態となっている場合には、法律上、1階部分の解約も認められます。

借家の一部のみの解約が、認められるか否かは総合的な判断による

借家人は、借家期間の定めがある場合には期間満了により借家契約を終了させることができ、また借家期間の定めがない場合でも、解約の申し入れをすることで、3カ月後に借家契約を終了させることができます(民法617条1項2号)。ところで、期間満了による場合も、解約の申し入れによる場合も、借家契約全体の終了については上記のように定められていますが、借家の一部のみの契約を終了させることが可能かどうかについては、民法および借地借家法にはなんの規定も存在していません。もし法律で借家の一部のみの解約が認められていたとすると、構造的または機能的に借家を部分に分けて賃貸できない場合にも適用され、家主は家賃収入は減っても、借家人を退居させることはできません。しかし、法律上の規定はありませんので、借家の一部のみの解約が認められるかどうかは、家主と借家人の双方の事情を総合的に勘案して判断することとなります。

それぞれ独立した構造であれば、1階部分のみの解約を認めざるを得ない

結論から言うと借家を分けて貸すことができない構造・機能の場合は、借家の一部のみの解約は認められませんが、別々に賃貸できるなら、解約が認められると解されます。これまでの判例では、1階部分をスナック喫茶の店舗として利用し、2階部分を従業員の更衣室として利用していた借家の明け渡し請求につき、2階部分のみの明け渡しを認めたものがあります(東京地裁昭和55年2月13日判決)。そこで、ご質問のケースですが、1階店舗部分と2階住居部分の出入り口も別々であり、構造上もそれぞれ独立の構造となっていれば、1階店舗部分のみの解約をすることも可能だといえます。しかし、たとえば、2階の居住部分に入るためには1階店舗内を通らなければならないなどの事情がある場合には、1階店舗部分のみの解約は認められないでしょう。
(Owners誌2008年1月号より)