Q&A

借家人が3ヵ月後に退去したいと中途解約の通知をしてきたので、新しい入居者を募集していたところ、借家人が解約の予約を撤回したいと言い出しました。退去してもらうことはできるのでしょうか?

借家人は解約予約を撤回することはできませんので、退去してもらうことが可能です。

一度中途解約を意思表示したら撤回は不可

賃貸借契約において契約期間が定められていない場合は、借家人は3ヵ月の予告期間をおいて賃貸借契約を中途解約することができます(民法617条)。また、契約期間が定められている場合であっても、賃貸借契約書に賃貸借契約を中途解約することができるとの定めがあれば、借家人は賃貸借契約を中途解約することができます。したがって、ご質問のケースでは、賃貸借契約の中途解約が可能であることを前提として、借家人が中途解約の意思表示をしたあとで、撤回することが可能かどうかが問題となります。この点、借家人はいったん行った解約予告の意思表示を撤回することはできないと解されています。これは契約解除の意思表示は撤回できないと規定する民法540条2項を根拠とします。したがって、家主は予告期間が満了した時点で、借家人に退去を請求できます。

退去しないときは賃料相当額などを請求できる

もし、予告期間が満了したにもかかわらず、借家人が借家に居座っている場合、家主は借家人に退去を請求できるだけでなく、退去するまでの間、賃料相当額の使用損害金を請求することができます。また、それによって新しい賃借人を募集することができなくなった場合は、募集に要した費用等の損害を賠償請求することもできます。一方、新たなテナントがなかなか見つからないなどの事情があり、引き続き借りてもらったほうが好都合というケースもあります。その場合は、借家人に解約予約を撤回してもらい、家主と借家人との間で新たに合意をして、続けて借りててもらうことも可能です。その際に重要なことは、解約予約を撤回したことを文書で明確にしておくことです。なぜなら、当初の3ヶ月の予告期間中に、もし借家人の気が変わり再び解約したいと言ってきた場合、当初の予告期間をオーバーして住み続けることになっても退去請求ができず、また撤回の証明ができないため使用損害金も請求できなくなるからです。
(Owners誌2006年5月号より)