Q&A

家賃を滞納している借家人に、契約を解除する旨の通知を出したところ、家賃を供託してきました。供託金を受け取ってもよいものでしょうか?

受け取ってもかまいませんが、使用損害金として受け取る旨の通知を出してから受け取る必要があります。

家賃を受け取ると契約の解除は成立しなくなる

供託とは、供託所(法務局またはその下部機関)に金銭等を寄託(預ける)することですが、法令で定められた供託原因がなければ手続を取ることはできません。
借家人が家賃を供託する場合は、以下3点のいずれかの供託原因(「弁済供託」)が必要です。

1.家主が家賃の受領を拒んでいる場合
2.家主が家賃を受領することができない場合
3.家主を確認できない場合

本件の場合、契約解除の通知を出した以上、大家さんは家賃を受け取るわけにはいきません。なぜなら、家賃を受け取ることは契約が継続していることを前提とする行為だからです。したがって、本件の供託原因は2の家主が家賃の受領を拒んでいるケースに該当することになります。
借家人が家賃を供託すると、供託所から供託通知書が送付されてきますので、家賃が供託されたことが分かります。そして、家主はいつでもその払い戻しを受けることができます。これを還付請求といいます。
供託金の還付を受けるためには、供託所に備えてある供託物払戻請求書に所定の事項を書き込み、送付されてきた供託通知書と印鑑証明書を提出すれば簡単にできます。

使用損害金として受け取ることを内容証明郵便で通知しておく

しかし、ここで重要なことは、供託された家賃を何の留保もつけずに払い戻すと、前述のように契約の継続を認めてしまうことになることです。それを認めないためには、家賃としてではなく、必ず使用損害金として受け取るという留保をつける必要があります。ところが、供託所ではそのような留保をつけた払い戻しの手続を認めていません。
そのため、大家さんは供託金の還付手続をする前に、供託金を家賃ではなく使用損害金として受け取る旨を記載した内容証明郵便を借家人に出しておく必要があります。
この通知を出しておけば、借家人に対して借家権を認めたことにはならないことが判例(最高裁昭和44年7月24日 判決)で示されています。
(Owners誌2007年1月号より)