Q&A

家賃を平気で滞納し、支払いを催促すると開き直った態度で喧嘩腰になる借家人がいます。何とか退去してもらいたいのですが、法的な手続きを取らずに、借家人を追い出す方法はないでしょうか?

法的な手続きによらずに借家人を追い出そうとすれば、刑事事件に発展する可能性もあるので、調停等の話し合いによって解決をはかるのがよいでしょう。

法的手続きを経なければ不法行為になることも

確かに、訴訟等の法的手続きを取ると時間と費用がかかります。また、勝訴の可能性が低い場合は多大な時間と費用をかけても全てが無駄になることが多いので、手早く借家人に出てもらう方法はないかという気持ちもわかります。しかし、法的な手続きを経ずに行なった行為は、場合によっては借家人に対する居住妨害として不法行為と見なされ、損害賠償を請求されたり脅迫罪、恐喝罪、住居侵入罪、器物損壊罪等の刑事事件に発展する危険性もあります。判例上では、契約解除の通知を出した後、借家の出入り口の閉鎖や電気・ガスの供給中止などを行なったケースにおいて、家主の行為は不法行為に該当するとして慰謝料を含む損害賠償金の支払いを命じています。しかし、その一方で「法律の所定の手続によったのでは権利に対する違法な侵害に対抗して原状を維持することが不可能、または著しく困難でやむをえない特別の事情が認められる場合には、限度を超えない範囲内で例外的に許容される場合がありうる」との判例もあります(最高裁 昭和40年12月7日判決)。

民事調停なら顔を合わせずに円満解決が可能

しかし実際には、どのような場合にやむをえない特別の事情が認められるかは極めて微妙であり、法治国家を建前とする日本では認められるケースはほとんどないと考えたほうが無難です。つまり、話し合いをせず、また法的手続を取らずに借家人を追い出す方法はないと考えたほうが現実的です。このような場合は、自分の判断だけで行動せず、弁護士等の専門家に相談されることをおすすめします。どうしても直接話し合いをしたくない場合は、簡易裁判所に一般民事調停を申し立てるのがおすすめです。一般民話し合いができるのでお互い顔を合わせることなく円満解決が期待できます。
(Owners誌2006年9月号より)