Q&A

毎年、家賃改定の交渉を行なっているのですが、必ず難航してしまいます。家賃改定をスムーズに行なうために何かよい方法はないでしょうか。

物価の上昇に比例して、自動的に家賃を改定するなどの特約を定めておくことが有効です。

家賃改定の基準を明確にすることが大切

家賃改定の交渉が難航する最大の理由は、家賃を改定する基準が明確になっていないことにあります。そこで、家賃改定に関する特約を定め、家賃改定の基準を明確にしておくことが有益であると考えます。家賃改定に関する特約は、その特約によって算出された家賃の額が妥当なものであり、借家人に一方的に不利益であるなどの事情がない限りは有効であると解されています。それでは、どのような特約を定めておけば、家賃の増額交渉をスムーズに行なうことができるでしょうか。たとえば、毎年5%ずつ値上げするとの特約はどうでしょうか。このような特約は、近隣の家賃相場が下落している場合でも家賃を増額でき、借家人に一方的に不利益をもたらすことから無効と解されます。また、固定資産税の増額に比例して家賃を増額するとの特約を定めることも考えられます。この方法は、借地の地代であれば、固定資産税を一つの基準(たとえば固定資産税の3倍相当額)とすることも有益です。しかし、借家の家賃の場合、家賃に占める固定資産税の割合は地代の場合に比べて極めて低いため、固定資産税の上昇分を基準に家賃の増額分を算定することは良策とはいえません。

物価指数に従って家賃改定するのが有益

そこで私は、客観的な物価指数を基準として、家賃の改定額を自動的に算出できるように、あらかじめ定めておくことが最も有益であると考えています。物価指数としては、消費者物価指数中の家賃地代指数とか、企業向けサービス価格指数などがあり、そのいずれかが絶対的であるというものではありません。そこでどちらかの物価指数を選択しておき、その基準に従って毎年家賃の改定を行なうようにします。この方法だと客観的な基準によって改定額が自動的に明確になり、改定額も無理のない範囲です。特約で家賃改定条項として定め、家主と借家人の双方が納得の上で契約しておけば、改定交渉をよりスムーズに行なうことが可能になると考えられます。
(Owners誌2007年12月号より)