Q&A

間もなく契約更新の日が近づいています。契約を更新する際、家賃の増額を請求しようと思います。家賃増額分について、敷金の補充及び保証金の補充を要求することができるでしょうか?

敷金の補充はできますが、保証金の補充については、特約がない限りできないと考えられます。

敷金は、滞納家賃などの担保として借家人から預かるお金

まず、敷金とは、賃貸借契約上生じる借家人の債務(滞納家賃など)の担保とするために、家主が借家人から預かる金残のことをいいます。すなわち、家主は、賃貸借契約時に、家賃の2,3ヵ月分を敷金として預かつておけば、借家人が2,3ヵ月分の家賃を滞納しても、敷金によって補充することができるのです。このような敷金の性格からすれば、家賃が増額されれば、その増額分について敷金も増額しなければ、敷金によつて借家人の滞納した家賃等の債務を担保にする目的が達せられなくなってしまうといえます。したがって、家主としては、家賃の増額請求をする際、家賃増額分(差額分)について、敷金を補充するよう要求することができます。

保証金は、借家契約とは別の契約に基づくお金

それでは、保証金の償却分についても、敷金と同様に、家賃増額分を補充するよう要求することができるでしょうか。この点、保証金の実質は、借家人の家主に対する貸金であって、賃貸借契約とは別個の契約に基づくものであると解されています。すなわち、保証金は、滞納した家賃の穴埋め等に当てられるものではなく、家賃がいくらであるかどうかとは全く関係ないのですから、家賃の増額が認められたからといって、保証金を補充してもらう必要性は、ないことになります。したがって、敷金の場合とは異なり、家賃の増額請求に際し、保証金の補充を請求することはできないと解されます。
(Owners誌2002年9月号より)