Q&A

入居者が自殺した場合、そのことを重要事項として説明する義務があると聞いています。すると家賃を下げる必要も出てくると思います。その損害は誰に請求できるのでしょうか?

法定相続人や連帯保証人に対して請求することができます。

契約の際、自殺者が出たことを説明する義務がある

まず、不動産を賃貸する場合、物件を借りるかどうかの意思決定に重要な影響を及ぼす事項について、仲介する不動産会社は「重要事項」として必ず書面にし、その内容を賃借人に口頭でも説明する義務があります(宅建業法35条)。ご質問のように過去に自殺者が出たという事実は、極めて重要な事実ですから、必ず説明が必要です。判例(横浜地方裁判所平成元年9月7日判決)も同様です。
※自殺者が出たことの影響は、数年におよぶが…
自殺者が出た物件は当然、借りる人は少なくなり、相場より安い家賃で貸すことになったり、借り手が長期間つかなかったり、家主はかなりの損害を被ると考えられます。こうした場合、家主はどの程度、損害賠償を請求することができるのか判断が難しいところですが、自殺と損害との間に因果関係が認められる範囲で可能だといえます。しかし、その範囲の妥当性については、判例がありませんのでケースごとに判断することになります。人の噂も75日といいますが、自殺者が出たことの影響は、少なくとも数年は消えることはないでしょう。その意味で、1年から2年分の家賃を損害として評価してもよいでしょう。しかし、それ以上は難しいというのが私見です。また、家賃を減額して賃貸した場合、減額割合がたとえば10~20%であれば、その減額分の1~2年分を賠償請求することも可能だと私は考えています。

いずれか資力のある人に請求することも可能

損害賠償の請求は、法定相続人と連帯保証人の両者に行なうことができますので、いずれか資力のある人に、あるいは同時に両者に請求することもできます。法定相続人に請求する場合、最高裁の判例によれば、損害賠償請求権のような金銭債権では法定相続人は相続分に応じた金額のみ相続すると解されています。したがって、法定相続人が複数いる場合は、各々の相続分に応じた金額を請求することになります。なお、裁判をする場合は通常、連帯保証人と相続人の両方に訴えを提起します。
(Owners誌2008年2月号より)