Q&A

長年住んできたので畳が傷んだとして、借家人から畳替えを要求されました。どの程度畳が傷んだら取り替える義務が発生するのでしょうか?

一般論として、畳を取り替えてから10年から20年経過した時期を目安として畳を取り替える義務が生じると考えます。

「健康で快適な生活が送れること」が借家の目的

家主には、借家の使用および収益に必要な修繕をする義務があります(民法606条1項)。しかし、軽微な破損・汚損についてまで家主に修繕義務が生じるわけではありません。
最高裁の判例によれば、居住の用に耐えないような状態、あるいは居住に著しい支障が生じた場合に修繕義務が生じるとされています(最高裁昭和38年11月28日判決)。
それでは、長年の居住により畳が傷んだケースについてはどのように考えたらよいでしょうか。この場合、畳が傷んだとしても物理的には「居住の用に耐えない」とまではいえないでしょう。しかし、「居住の用に耐えない」かどうかは単に物理的側面のみではなく、「健康で快適な生活を送る」という借家本来の目的から判断する必要があります。
そのような観点から、社会通念に照らして「畳替えするのが相当」と判断できる年数が経過した時期には、家主にその義務が発生すると解されます。

借家人の過失による損傷なら家主に修繕義務はない

もっとも、借家人の使用状況などによって畳の傷み具合も異なりますので、一概に何年という区切りをつけることはむずかしいと思われます。全日本畳組合連合会の広報では、「2~3年で裏返し、3~5年で表替え、10~20年で畳替え」とされており、この基準を参考にするならば、通常は畳を取り替えて10年から20年を目安として、取り替えの義務が発生すると解すべきでしょう。
以上が一般論ですが、畳の損傷が著しい場合であっても家主に修繕義務が免除される場合があります。例えば、借家人の手入れ不足によって畳にカビが生えた場合、またタバコの火の不始末による焼け焦げなど、借家人の責任によって損傷が生じた場合などです。
さらに、建築後かなりの年数が経過している古家の場合、「使用継続に支障が生じているとき」に限って家主の修繕義務が生じるとされています(東京地裁平成3年5月29日判決)。
(Owners誌2007年2月号より)