Q&A

借家の老朽化が進み、給排水設備が壊れてしまったので大修繕工事をすることになりました。工事には数カ月かかるのですが、その間だけ賃借人に借家から出てもらうことは可能ですか?またその間の家賃はどうなりますか?

工事期間中、賃借人は借家から出て行ってもらうことができます。しかし、その間の家賃を請求することはできません。

賃借人が修繕工事を拒否した場合は契約解除することができる

民法606条によれば、「賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務」を負い、「賃貸人が賃貸物の保存に必要な行為をするときは、賃借人は、これを拒むことができない」ことになっています。給排水設備の大修繕工事は、「賃貸物の使用及び収益に必要な修繕」であり、また、「賃貸物の保存に必要な行為」に該当しますので、賃借人はこれを拒むことはできません。もし賃借人がこれを拒否した場合、判例では契約解除原因になるとしています(横浜地裁昭和33年11月27日判決)。

工事期間中の仮住まいの費用は賃借人の負担となる

それでは、大修繕工事を行なっている間、賃借人は家賃の支払義務を免れるのでしょうか。この点、賃借人の賃料支払義務は借家を使用収益する対価として発生するので、工事期間中は賃料の支払義務は発生しないと解すべきです。判例によれば、賃貸人が修繕義務を怠ったために借家を使用収益できなくなった場合、賃借人は家賃の支払義務を免除されると判示するものがあります(東京地裁平成5年11月8日判決)。ご質問の場合は修繕義務を怠ったわけではありませんが、賃借人が借家を使えない以上、賃借人の賃料支払義務は発生しないと考えられます。
(Owners誌2006年3月号より)