Q&A

借家を明け渡してもらったところ、結露がひどかったせいで、多額の補修費用がかかってしまいました。借家人に対し、その補修費用を請求することができるでしょうか?

結露の原因にもよりますが、一般的には、結露は建物の構造によって発生したものと考えられ、特別の事情がない限り、補修費用を借家人に請求することはできません。
借家人が通常の住まい方・使い方をしていたにもかかわらず、借家の価値を減少させるような破損・汚損が発生した場合、その補修費用は家主の負担義務とされ、借家人に補修費用は請求できないと解されています。つまり借家人は、自らの落ち度によって生じた汚損・破損個所についてのみ補修義務を負うことになります。

「通常の住まい方」で発生した汚損・破損は家主の負担となる

それでは結露によって発生した汚損・破損は、どうなるのでしょうか。
家主としては結露発生の原因が、借家人が隙間を空けずに家具を置いたり、きちんと風通しをしていなかったなど、借家人の落ち度による場合は補修費用を借家人に請求できると考えます。
しかし、名古屋地裁の判例によれば「結露は一般に、建物の構造によって発生の基本的条件が与えられるものであるから、特別の事情が存しない限り、結露による汚損を借家人の責めに帰することはできない」と判示しています。

結露しやすい物件は、契約時に「結露防止対策」指示書の交付を

ただし、ケースによっては、借家人の使い方の悪さによって結露が発生した場合もあると思われますので、この判例が全てのケースに当てはまるものではないと考えます。
大家さんとしては一級建築士などに調査を依頼して、結露の原因が建物の構造上のものか否かについて調べておくことも必要だと思います。
また建物の構造上、結露が発生しやすいと分かっている場合には、賃貸借契約を結ぶ際に「結露が発生しやすい物件であること」を記すとともに「結露の発生を防ぐ具体的な対策」を指示した書面を交付し、受領印をもらっておくとよいでしょう。書面を交わしておけば、その対策を怠ったという理由で、借家人に対して損害賠償を請求することが可能となります。
(Owners誌2005年2月号より)