Q&A

アパートの住人の一人が、毎夜、窓を開けて大きな音で音楽を聴いており、ほかの住人から苦情が出ています。何度注意しても止めてくれません。どうしたらよいでしょうか?

賃貸借契約を解除する方法があります。

「信頼関係の著しい破壊」により、賃貸借契約の解除が可能

賃借人は、契約または目的物(借家)の性質によって定まる用法に従って、使用すべき義務を負っています(民法616条・594条1項)。
そして賃借人が、その用法遵守義務に違反して、賃貸人との間の信頼関係が破壊されるに至った場合には、判例・通説によれば、賃貸人は賃貸借契約を解除することができると解されています。
ご質問のケースのような場合、大家さんとしては、近隣への迷惑行為を行う賃借人を退去させなければ、迷惑を被っているほかの住人が借家から退去してしまう恐れがあります。そうなると今後、だれも借り手がつかなくなってしまう危険もありますので、賃借人を退去させることは大変重要なことです。
そして、大家さんが何度も迷惑行為を止めるように注意したにもかかわらず、全く聞き入れられなかった場合には、賃貸人と賃借人との間で賃貸借契約を継続していくに足りる信頼関係は著しく破壊されたので、大家さんは、賃貸借契約を解除することができるでしょう。

迷惑行為を止めさせる方法として仮処分を申し立てることもできるが…

契約を解除することなく、迷惑行為を止めさせる方法として仮処分を申し立て、たとえば「部屋の窓を閉めて音楽を聴くこと」「夜間は一定のボリュームを超えて音楽を聴くことを禁止する」などを裁判所から命じてもらう方法もあります。しかし、音楽を聴くことは一般生活者として認められ、保護されている権利であるため、たとえばカラオケや雀荘などの営利目的のものと異なり、迷惑行為なのかどうか、判断が非常に難しいのが実情です。
したがって、ご質問のケースは仮処分が必ず認められるとは限らないため、契約解除の方向で考えるのがよいでしょう。
(Owners誌2004年9月号より)