Q&A

築40年以上の一軒家を貸しています。そろそろ、借家を取り壊したいと考えていますが、借家人からは、修繕すればまだ住めると言ってきました。明け渡してもらうことはできないのでしょうか?

借家が「朽廃」している場合には、借家の明け渡しを求めることができます。しかし、修繕すれば居住できる場合には、修繕する義務があり、明け渡しを求めることはできません。

「築40年以上」という理由だけでは「朽廃」とはいえない

借家契約は、建物が「朽廃」すると当然終了すると解されています。「朽廃」とは、建物が年月の経過により建物としての効用を失うほどに損傷老朽化している状態のことをいいます。この「朽廃」という概念については、非常に厳格に解されており、建物の基礎が沈下し、建物全体が傾斜しているなど、到底人が住むことができない状態とならない限り、「朽廃」には当たらないとされています。従って、ご質問のケースのように、単に、借家が築40年以上たっているという理由だけでは「朽廃」とはいえませんが、暴風や地震によって、倒壊する危険があるほど建物が傾斜している状態であれば、借家は 「朽廃」しているものとして、借家の明け渡しを求めることができます。

家主は、借家人から求められれば借家を修繕しなくてはならない

それでは、借家が「朽廃」の状態にあっても、適切な修繕をすれば、十分居住できる場合、家主は、借家人の修繕要求に応じる必要があるでしょうか。この点を民法では、家主には、借家を修繕する義務があると規定していますので(606条1項)、借家人から修繕を求められれば、借家を修繕しなければなりません。従って、屋根の葺き替えや土台の入れ替え等によって、借家に居住できるようになるのであれば、家主としては、借家人の修繕要求に応じる必要があります。 しかし、家主の修繕義務といっても、建て替えに匹敵するほどの工事に応じる義務はありません。
(Owners誌2002年12月号より)