Q&A

煙草の焦げ跡が付いたカーペットの取り替え費用は、敷金から差し引くことができますか?
4年間住んでいた借家人が引っ越すことになったのですが、リビングルームのカーペットに煙草の焦げの跡を見つけました。カーペットの取替費用を敷金から差し引くことができるでしょうか? カーペットは6年前に私のほうで取り付けたものです。

取替費用全額を敷金から差し引くことはできませんが、減価償却した残存価値を差し引くことができます

不注意による損傷でも、借家人に全額負担の義務はない

カーペットに煙草の焼け焦げを付けたことは、借家人の不注意によるものであり、借家人は家主に対して、善管注意義務違反に基づいて損害賠償義務を負うことになります。
それでは、家主は借家人に対して、善管注意義務違反に基づいてカーペットを新しい物と取り替える費用の全額を請求できるのでしょうか。
この点、経年劣化によって減少した価値は、すでに賃料で補われているものと解されていますから、借家人としては4年間使用したものとして返還すればよく、全額を負担する義務はありません。
この考え方は、借家人が家主に対して損害賠償義務を負う場合にも同様に当てはまります。すなわち、借家人の不注意によって目的物が毀損した場合、借家人が負担すべき費用は、経年劣化による損耗部分を超えた分の金額ということになります。

カーペットは6年経過すると残存価値は10%に減る

では、損害賠償すべき範囲および費用を算出する際、その基準はどのように考えたらよいでしょうか。
まず、損害賠償すべき範囲については、煙草の焼け焦げはカーペットの一部と思われますが、実際問題として毀損部分のみの張り替え工事を行なったのでは、継ぎはぎ模様になってしまうため、全体を張り替える必要があります。
損害賠償する際の費用算出の基準は、目的物の経年劣化・減価償却を考慮して決定すべきと考えられており、「減価償却資産の耐用年数等に関する省令(昭和40年3月31日大蔵省令第15条)」を参考にするとよいでしょう。
同省令によれば、カーペットは6年で残存価値が10%(6年目以降は一律10%)になるとされています。そこで、この基準をご質問のケースに当てはめると、すでに使用されていた2年と入居期間4年を合計すると6年となり、残存価値は10%に。したがって、家主は張り替えたカーペットの10%の金額を敷金から控除できることになります。
(Owners誌2009年2月号より)