Q&A

通常の借家契約で、契約期間を2年間と定めて借家を賃貸したところ、3カ月で借家人が解約したいと言ってきました。契約書には中途解約に関する定めを設けていません。中途解約を認める代わりに残存期間の家賃を請求できるでしょうか?

残存期間全部の家賃を請求することは、むずかしいと思われます

契約の残存期間が長期の場合、
借家人には酷な結果を強いることになる

契約書上、中途解約に関する定めがない場合であっても、借家人からの中途解約が認められるでしょうか。
この点、民法618条によれば、中途解約を認める特約がある場合には、それが可能だとされています。この民法618条の反対解釈から、中途解約に関する特約がない場合には、中途解約は認められないとの見解もあります。
実際、中途解約が認められてしまうと、家主はある期間、空室のリスクを負うこととなり、家主の利益は阻害されてしまいます。
しかし、反対に中途解約が認められないとなると、たとえば借家人は急な転勤によって借家に居住しないにも関わらず、残存期間の家賃を支払い続けなければならず、それが長期の場合は借家人に酷な結果を強いることになります。

期限の定めがある場合の中途解約は、
「6カ月程度の予告期間が必要」と考えるのが妥当

そこで、借家人の利益と家主の利益を比較衡量して決するのが妥当であると考えます。この点に関して直接判示した判例が見当たりませんので、あくまでも私見となりますが、民法は期限の定めのない契約であれば3カ月の予告期間をおけば解約できるとしていることから(民法617条)、今回のご質問のように期限の定めがある場合には3カ月程度では足りず、6カ月程度の予告期間が必要だと解するのが妥当ではないかと思います。
事前にこうしたトラブルを回避するためには、契約書の中にきちんと中途解約した場合の違約金の定めをしておくとよいでしょう。
なお、一般的には退去予告期間を1カ月と定めた契約書が多いようですが、予告期間が短いほど大家さんのリスクは高くなることになります。その点をよく考慮して、大家さんそれぞれの状況に合わせてご対応ください。
(Owners誌2009年3月号より)