Q&A

更新後の家賃の額で借家人ともめていたことから、改めて更新契約書を作成することなく借家契約が自動更新されました。その場合、更新された後の契約内容はどのようになるのでしょうか?

更新後の契約条件は、従前の契約と同一の条件となるのが原則ですが、例外もあります。

自動更新後も、更新前の家賃や敷金は存続するが、賃貸期間の定めはなくなる

借地借家法26条によれば、「賃貸借期間満了の1年前から6カ月前までに更新拒絶の通知または条件を変更しなければ更新しない」旨の通知をしておかない限り、従前の契約と同一の条件をもって更新されます。
ただし、賃貸借の期間については更新契約を交わしていないため、自動更新後は「期間の定めのないもの」となり(借地借家法26条1項但書)、賃料は従前の賃料が更新後の賃料となります(東京地裁昭和41年5月19日判決)。
では、敷金などの担保はどうなるのか。民法619条2項によれば、「担保を供したるときは、その担保は期間の満了によりて消滅す。ただし、敷金はこの限りにあらず」と規定していることから、自動更新後も敷金は存続し、保証金も同様と解されます。人的担保といわれる保証人の責任も、一般には更新後も消滅することなく存続すると解されています。

更新前の契約が、更新後に効力を失うケースとは?

また、以下のように従前の契約が更新後に存続しない、例外事項もあります。「従前の賃貸借契約時において、裁判上の和解、調停が成立していた場合、従前の賃貸借の和解等の執行力は、更新後の賃貸借には及ばない」という判例(広島地裁昭和41年6月6日判決)があります。
この判例の意味をご説明しましょう。たとえば従前の賃貸借契約中に借家人が家賃を滞納したことがあり、その際、例えば「今後2カ月分の家賃を滞納した場合、家主は賃貸借契約を解除でき、借家人は直ちに借家を明け渡す」との裁判上の和解・調停が成立していたとします。
再び借家人が2カ月の家賃滞納をした場合、それが自動更新前なら明け渡しの強制執行が可能ですが、自動更新後であれば、それ以前の和解調書は執行力がなくなっていますので、強制執行はできません。明け渡してもらうためには、改めて裁判をして判決を得る必要があります。
いずれにしても大家さんとしては、問題がある借家人の場合は特に、自動更新という事態に至る前に解決しておくことが重要です。
(Owners誌2009年4月号より)