Q&A

借家人が、賃貸借契約書に定められている面積よりも実測面積の方が少ないので、その分の賃料を減額するようにと言ってきました。応じる必要がありますか?

面積を基礎として賃料が定められている場合には、賃料の減額に応じる必要があります。

実際の面積と異なる場合、売買契約では、減額請求権が認められている

民法565条によれば、数量を指示して売買した物に不足があった場合(数量指示売買といいます)、買主には、代金減額請求権、損害賠償請求権が認められ、さらには、残存部分だけなら買わなかったであろうと判断される場合には契約解除権も認められています。そして、この規定は賃貸借契約の場合にも準用されています(民法559条。)
それでは、この規定を根拠に借家人は賃料の減額を請求できるでしょうか。
この点、まず、「数量を指示してなされた賃貸借」と言えるかどうかが問題となります。ここでいう「数量を指示して」の意味は、売買契約に関する判例により明らかにされています。
すなわち、最高裁の昭和43年8月20日の判例によれば、「数量指示売買」とは、当事者間で目的物の実際の数量について、契約時に一定の面積等を表示し、その数量を基礎として代金額が定められた売買であるとされています。

賃料を坪単価で決めている場合は、減額請求や損害賠償請求も認められる

それでは、この最高裁の判例で示された「数量を指示して」の意味を賃貸借のケースに当てはめてみましょう。たとえば、契約書には賃貸面積として何坪(何㎡)と表示され、賃料として何円と表示されているだけであって、坪単価(㎡単価)を基礎として賃料額が定められていない場合には、「数量を指示して」なされた賃貸借とはいえないと解されます。その場合には賃料減額の請求はできないことになります。
これに対して、賃料額を坪単価(㎡単価)に面積を乗じる方法により算定している場合は、「数量を指示して」なされた賃貸借契約であるといえ、賃料の減額請求をできることになります。
なお、「数量を指示して」なされた賃貸借契約である場合、将来の賃料の減額請求だけなく、過去の減額分も損害として賠償請求されることになります。
(Owners誌2009年5月号より)