Q&A

1年半前に賃料を増額したのですが、まだ近隣の相場よりも安いのでもう少し賃料を増額したいと思います。このように短い期間でも賃料の増額請求は可能でしょうか?

前回の賃料の改訂時から、それほど期間が経過していなくても、現行の賃料が不相当なら賃料の増額請求は可能です。

時間が経っていなくても賃料が不相当なら増額請求はできる

借地借家法32条によれば、建物の賃料が土地建物に対する公租公課等の増減や経済事情の変動などにより近隣の賃料に比較して不相当となった場合、賃料の増額請求(あるいは減額請求)をすることができるとされています。
しかし、1年半前に賃料を増額したばかりでも、現行の賃料が「不相当」となったといえるでしょうか。
判例は、現行の賃料が定められた時点からどのくらい時間が経過しているかという問題は、「賃料が不相当か否か」を判断する一つの事情に過ぎず、現行の賃料が客観的に不相当なら増額請求は認められると判断しています(最高裁平成3年11月29日判決)。したがって、1年半前に賃料を増額したばかりでも、「賃料が不相当」であるとして増額請求することはできます。

新規に募集した入居者の「新規賃料」と同金額までの増額は、すぐにはできない

それでは、「賃料が不相当」であると判断される場合、近隣相場の賃料にまで賃料を増額できるでしょうか。
賃貸人が増額請求して認められる賃料のことを「継続賃料」といい、この「継続賃料」と新規に入居者を募集した際の「新規賃料」とは区別されています。すなわち、「継続賃料」は「賃料が不相当」となったとしても、直ちに新規に入居者と契約した新規賃料(近隣の相場の賃料等)にまで、増額することは認められないといえます。
継続賃料は、たとえば現行の賃料と新規賃料との差額の半分を「継続賃料」とするなどの手法(差額配分法、スライド法、利回り法など)によって、算定すべきと解されています。ただし、この「継続賃料」は専門的な判断が要求されることから、厳密には不動産鑑定士による鑑定が必要となります。
なお、賃借人が増額請求された賃料に同意できないと言ってきた場合には、裁判によって解決するほかありませんが、直ちに訴訟を提起することはできず、最初に調停を申し立てる必要があり、調停が成立しなかった場合に初めて訴訟を提起することが可能となります。
(Owners誌2009年10月号より)