Q&A

アパートが老朽化してきたため、数年後に建て替えを考えています。今から手を打っておくべきことを教えてください。

借家人と交渉して、早めに定期借家契約に切り替えておくことをおすすめします。

普通借家契約では、「退去」は非常に困難

 老朽化したアパートを建て替えるためには、当然のことながら、借家人に退去してもらう必要があります。しかし、通常の借家契約では、契約期間が経過しても「正当な事由」がない限り、更新を拒絶することはできません(借地借家法28条)。しかも、「正当な事由」については極めて厳格に解釈されており、仮に裁判所に認めてもらえても、多額の立退料の支払いが条件となることは必須であり、解決には長期間を要します。
 そこで、契約期間が終了したら必ず退去しなければならない「定期借家契約」に切り替えておくことが大切です。定期借家契約なら、借家人の居座りを防止できるだけでなく、普通借家と異なり、原則として中途解約が認められていないため、契約期間中の家賃も保証されます。

承諾書を交わしたのち、定期借家契約への切り替えを

 家主の「定期借家契約への切り替え」の申し出に対し、スムーズに承諾してくれる人もいますが、後で気が変わらないとも限りません。その場合、承諾書に署名捺印してもらっていても、定期借家契約への切り替えが済んでない限り、最終的に有効とはなりません。
 また、なかには契約の切り替えを拒否する人もいます。交渉にあたっては、たとえば家賃の減額やフリーレント(一定期間の家賃を無料化)にしたり、それでも応じない場合は建て替え後の借家への再入居や、再入居までの家賃の保証を受け入れざるを得ない場合もあるでしょう。借家人を立ち退かせることはそれほど難しいのです。家主としては相当の覚悟で交渉に当たり、なんとしても定期借家契約に切り替えておく必要があるといえます。
 定期借家契約への切り替えは、一旦普通借家契約を解約して、新規に定期借家契約を締結することになります。その際、定期借家契約が「更新されない契約」であることの説明を書面と口頭の両方で行ない、納得の上で締結するなど、借地借家法上の要件を満たすことが必要です。
 定期借家契約の契約期間は360日、2年、それ以上など、自由に設定できますが、建て替えが迫っているなら、360日にしておくのがベターです。また交渉は、長引くことも考えて早めに開始するのが得策です。なお、難しい借家人の場合はトラブルを避けるため、弁護士に依頼されることをおすすめします。
(Owners誌2010年6月号より)