Q&A

ビルの一室を喫茶店として賃貸したのですが、最近、喫茶店内に違法賭博のゲーム機を置いていることが分かりました。賃貸借契約を解除することができるでしょうか?

違法賭博は犯罪行為であり、契約を解除することができると考えます。

賃借人は本来、「違法賭博を行なわない義務」を負っている

 賃借人は、契約で定められた用法にしたがって借家を使用・収益する義務(用法遵守義務)を負っています(民法616条、594条1項)。それでは、ご質問のケースにおいて、用法遵守義務違反が認められるでしょうか。
 賭博を禁止する特約を定めていた場合は、用法遵守義務違反となることは当然のことですが、賭博禁止の条項を定めていなかったとしても、賭博行為は犯罪行為であり、賃貸人がそのような犯罪行為を是認するはずがありません。したがって賃借人は、借家を使用・収益するにあたって、違法賭博を行なわないという義務を負っていると解すべきと考えます。
 それでは今回の場合、用法義務違反したとして、賃貸人は賃貸借契約を解除することができるでしょうか。

喫茶店にゲーム機を置いて賭博!許されるはずがない!!

違法賭博のゲーム機の設置は
賃貸人との信頼関係の著しい破壊といえる

 この点、判例によれば、用法違反を理由として賃貸借契約を解除するためには、その違反行為が「賃貸借の基礎たる信頼関係を破壊する」程度のものでなければならないとされています。
 つまり、賃借人の用法違反の程度が小さく、賃貸人との信頼関係を破壊するとまではいえない場合には、賃貸借契約を解除することはできないということになります。
 ご質問のケースにおいて、契約を解除することができるかどうかは、ゲーム喫茶として違法賭博を行なったことが、賃貸人と賃借人との間の信頼関係を破壊するに至ったといえるかどうかにかかってきます。
 違法賭博は前述のように犯罪行為であり、賃借人は借家をゲーム喫茶として犯罪行為の場や手段に利用し、賭博行為を行なっているわけですから、賃貸人と賃借人との間の信頼関係を破壊するものであり、しかも、その程度は著しいといえます。
 したがって賃貸人は、違反行為を止めるように催告することなく、賃貸借契約を解除することができると考えます(無催告解除)。判例も同様です(東京高等裁判所平成5年11月22日判決)。
(Owners誌2011年1月号より)